草が生える。
いや笑ってるわけじゃない。雑草がどんどん生えてくる、という話だ。仕事場でも借家の庭でも、雑草処理が大変である。もうじき梅雨になるし、これからもっと大変だろう。
どっちを向いても近距離か中距離に大きな山がある環境で仕事をしている。山って緑色である。そりゃそうで、基本、緑で覆われない地べたなんかない。整地し、舗装し、建てたりなんかして、緑にまみれる本来を忘れて暮らすものだろうが、まやかしにすぎないだろう。
植物って本当、どんどん生えてくる。どんどんどんどん、わらわらわらわら、生えてくる。魔法のようです。そこにどちゃっと土だけがあるとする。その中には必ず混じっている極小の粒があって、植物の種である。これが時期を見てにょっきり発芽し、何倍にも何万倍にも大きくメタモルフォーゼしながら一帯を緑に染めていく。こいつら紙みたいに軽くて薄い小さな面を沢山作るのだが、この色が緑色なのだ。葉をこしらえてうまく光を浴び、水を吸って育ち、やがては風を待ったり、虫を呼んだりして、種を土に還し、植物は、またそれぞれに増えていくだろう。
世界の主役は植物なのだ。しゃべる猿とかちょっとでしゃばってる脇役に過ぎない。僕らはもっと植物をリスペクトし、共生を図らねばならず、だから草むしりとかしなくてもいいのではないのか。「もうむしらない」を人類の合言葉にしよう。MouMushiraNai。MMN。夏場の大変な草むしり反対。
しかし結局上司から「SSM」が飛んでくるので全然無理である。「そろそろむしれ」を合言葉に除草作業は始まるが、仕事場ではもっぱら「むしる」ではなく刈払い機で行っている。ああそう、最近足場の悪い作業用に5本指の靴を買ったんだけど、これが非常に優秀、というか効果覿面で、作業が非常に楽になった。
ビブラムのVーTREKてやつで、5本指ソックス同様に、足先が5本指になっている屋外用の靴だ。これが崩れやすい斜面での作業において、地面の状態をつぶさに感じられたり、グリップ力を高めたりと、とにかく役にたつ。もうこれなしでは作業したくない程だ。
しかし一点、問題があった。いや、大問題があった。草刈り作業を終えて戻ってくると、知らず、足の指と指の間に草が挟まっていることが多いのだ。ある時、穂がついた草が親指と人差し指の間に挟まってきれいに立っている時があって、慌てて引き抜いたのだが、想像してみてほしいのだ。
あなたに向かってそんなおじさんが歩み寄ってくるとしよう。「足の指でおちゃめに草をつまんだまま歩行するおじさん」の接近は、事件である。もしそれが一輪の花だったりした場合、周囲の困惑は計り知れない。そしてもしそれが、両足にシンメトリーにつままれていたりなんかしたら。あなたは神速で逆方向へ走るだろう。
例えどんなに真面目で立派な人が含蓄のある話をしている時であったとしても、足で花をつまんでいたら全てがおふざけタイムとなりはてる。そんな大人は大問題である。足の指で迂闊なものをつままないようにしたい。気を引き締めていこうと思う。