夜の散歩という踊り

アイデア

月ぴかぴかる風なまぬるし夜やってきて、わたしめっぽう気分よしだし散歩した。

より静かを求めてぬるぬる進んで到着の土手、鼻歌飛び出し自覚する。思った以上にご機嫌です。

月ぴかぴかり川ざぶざぶる夜の袂、脳内無重力、魂るんるん極まって、長らく封印せしスキップ解放するも2歩目で足がもつれし故に、踏まなかったこととします。

梅の花が匂ったか気のせいか、上下灰色スウェットをピンクに感覚せしほどに、今宵は春がでしゃばった。はにかんで月に告げる。「今更だけど、こんばんわ」

おや風なまぬるし川ざぶざぶるここに佇む、わたしの耳にかすかに届く、なんだろか聞こえる。かちゃかちゃかちゃかちゃ。薮の向こうの河原から、ざぶざぶにかちゃかちゃとなにか音、混じってる。何事。

不自然だが小気味よく不気味でないその音の正体、暴きたくなった。わたしは今油断の塊、罠に怯えない。なんとかなるを携えて、薮にいりアシを割って奥を覗いた。

川べり、河原、月明かり。2匹の狸が踊ってる。世界が冗談になった。なんだそれ。踊ってる狸が。

狸がっていうか違う違う。置物置物、狸の置物。金玉。蕎麦屋の店先とかにある陶器で出来た置物の、笠かぶり酒持った金玉狸まんまの狸が、月明かりにつやつや照らされくるくる回ったりつんつん跳ねたり。踊ってる。陶器の狸がです。

それだけならずその周り、3匹のダルメシアンが座って縦揺れせし状態。陶器のダルメシアン、ひとんちの玄関で見たことある。後ろに横揺れせし、6匹の招き猫も見えてきた。

更にそれだけならずそれらの足元、数十の白い小さい何かがかちゃかちゃかちゃかちゃ。狐だ狐。全部狐だ。陶器の狐がいっぱいだ。

陶器の動物たちが輪になって踊ってる。回り跳ね揺れている。河原がステージ、月が照明、川が音楽、石を踏み、かちゃかちゃ音を手拍子にして。街じゅうの陶器の動物たち集れり。兎もいる。梟もいる。パンダもいる。陶器のみんなにも踊りが必要だ。そうなのか。ばかみたいだ。わたしはそれを覗いてる、ありがとう、特等席です。

月ぴかぴかる風なまぬるし川ざぶざぶる、河原に陶器の獣たち、つやつやかちゃかちゃって踊る、幸せの白い膜に包まれしこの全体像、是非Xのアイコンにしたい。スマホで撮ろうとしたが、そもそも持って出ておらず諦め、わたしは去ることといたします。今宵の散歩がわたしの踊り。楽しいぞ。街の祠は今カラだろな。