「先の尖った細い細い電車に乗って、速いやつ、かなり」
「どのくらい?」
「かなり。目にも止まらない」
「先の尖った細い細い電車。どの位細いの?」
「もう、細いの。糸みたいに」
「それって、電車?」
「うん。乗ってる。立ってる。吊り輪につかまって」
「糸みたいに細い電車の中で?」
「うん、細い吊り輪につかまって」
「細い吊り輪」
「私も細い。椅子も、吊り輪も、吊り広告も、ガラスも、私も、みんな細い」
「そりゃ細いな」
「そう、細い」
「そうね」
「そう」
「なんで?」
「なんで細いかって?」
「なんで細いの?」
「擦り抜けたり、入り込んだりするのに便利」
「何両?」 「さあ、数えたことない」
「お前のほかには誰か乗ってる?」
「さあ、私のいる車両以外には、行ったことないから、わかんない、友達とか、 知らない人とか、乗ってるかも」
「なんで?」
「なんでって?」
「なんの為にその電車に乗ってるの?」
「飛ぶんだよ、ちなみに」
「空?」
「空っていうか、空中。ああそう、基本的には飛んでるのよ、その電車」
「レールは?」
「ない」
「駅は?」
「ない」
「それって電車?」
「うん、電車。電車だよ。いいの、電車で。電車がいいの」
「そう」
「うん、そう」
「そうか」
「そう」
「ふーん」
「変身合体すんのよ」
「は?」
「その電車」
「なにが?」
「近くの細い電車達が集まって合体。すると一体の巨大ロボに」
「おお」
「でも細い」
「合体しても細い」
「そう細い」
「名前は?」
「ほそロボ」
「先の尖った細い細い電車は幾つもあるんだ」
「そう、或使命の為に」
「なんの為に?」
「擦り抜けたり入り込んだりする為に」
「合体したら?」
「強くなる」
「なんの為に?」
「ケンカに勝つ為に」
「ふーん」
「なんにもわかんないくせに」
「っていうか、うん」
「馬鹿だなあ」
「馬鹿かなあ」
「話が脱線したね」
「電車だけにね」
「そうね」
「なんの話だっけ?」