ここは見晴らしがいいな。あれはなんだろう、砂煙が立っている。
おや、君は何か難しいことを考えているね。本当に、偉くなったもんだ。尊敬されているかい?友達は増えたのか?君が選んだ道さ。答えはまだ出ないのかい?君は本当に長い間、難しいことについて考え続けている。きっと意義深いことなんだろう。あとについてくる人はいるかい?
正しいことだけしてきたんだね。見上げたものさ。伏されたり呑まれたりしないでここまできたんだろう。妥協しなかった。考えることをやめなかった。素晴らしいよ。辺りの様子はどうだい?大丈夫かい?寂しくはないのか?少し顔色が悪いようだよ。
後悔があるだろうか、ないだろうね。君の行動は信念に貫かれている。心が痛まなかっただろうか、平気だったろう。障害物をいくつも排除してきた、戦ってきた、怯んだら負けだった、だから、それでよかったのさ。君はまだ立っている、そのことだけが真実さ。誇らしいよ。
そして君は今、こんな見晴らしのいい場所から街を見下ろしている。砂煙が立っているね。さっきより大きくなっているように見える。
泥棒や詐欺師や異教徒、無法者たちの力はもう君に及ばない。立派になった。偉くなったもんだ。いい服を着ているね。仕立てが良いようだ。調子はどうだい?時々はゆっくり休むといい。明日もまた、難しいことを考えるんだろう?君が選んだ道さ。もう邪魔者は減った。友達は増えたのか?気のせいかな。君の顔色は少し変に見える。
城を建てるのか?山を崩すのか?大きな大きな軍艦を作るのか?予定を教えてくれないか。君は随分と長い間難しいことを考えてきた。結構なことさ。まだ満たされないのかい?いつまでやるつもりなんだ。辺りの様子はどうだい?数えたことはないのか?それだよ。その、君の足元に転がっているものたちの数を。ひどい臭いさ。すごい数じゃないか。数えたことはないのかい?誰も教えてくれなかったのか?ここはひどく穢れている。もう誰も寄り付かない。僕くらいのものさ。君のことを心配してるんだ。大丈夫かい?
砂煙がどんどん大きくなっていく。聞こえてきたね、声が。こっちに近付いてくる。
しっかりしてくれよ。僕のことを覚えてないのか?顔色が良くないぞ。少し横になろう。何も気にしなくていい。少し休むといいよ。横になるんだ。そう。わかるだろう。そうさ。同じだろう。君の足元に転がっているものたちと、君は同じものなのさ。腐っていくんだ。勿論、僕だってそうさ。僕のことを思い出せないのかい?仕方がない。君はいつも難しいことを考えていて余裕がなかった。でもそれも終わりのようだよ。
大丈夫。何も気にしなくていい。ある意味、成就したのさ。みんな喜んでいる。また賑やかになるね。終わったんだ。みんなあるべき場所へ帰っていく、それだけのことさ。残さなくていい。何もかもただ、地層の一部になっていくだけなんだ。泣いているのか?溶けていくんだ。僕も一緒にいく。何も難しいことはないよ。

