無い子

ほどなくして、少女は現れた。

少女の立ち姿はつまらなかった。
後ろの植え込みにある、
なんだか知らない木々のほうがむしろ、
生きているという感じがする。
少女の顔は表情に乏しく、
ただ、視線だけは定まっていて、
僕を、見ている。

空は曇っていて、
暑くも寒くもなくて、
風なんかも吹いていなかった。
大きなトラックが通り過ぎたら、
いやにうるさくて、
つまり、僕等の周りは静かだった。
少女はずっと僕の前に立っているから、
僕は、少女の取り柄を探すことにした。

しかし見れども、少女はつまらなかった。
取り立てて良いという点も、
また悪いという点もなかった。
例えば、
僕をじっと見定めるその目にすら、
なんらかの感想を与えるのが難しいのだ。

一週間後に僕は、
僕と少女の出会いを、
思い出すことが出来ないだろう。
僕を見る少女を、
僕もまた見ているのに。

手を伸ばして、
少女の頬に触れて、
そうでもしなければ、
何もないことになる。
生気のないその頬に、
如何ほどの感触があるのか訝しいけれど。

期待も落胆もないまま、
何も得ず、何も失わず、
僕と少女は見詰め合って、
時間を、ひっそりと等間隔に直す様にして、
しばらく、そうしていた。

ほどなくして、少女は去るだろう。