骨骨日日その3

只々日々

▪️10月2日水曜日、リハビリがはじまる。

▪️沖縄感のある女性が僕のリハビリ担当らしい。車椅子の練習をし、自力でトイレに行く目処が立つ。

▪️というか、入院5日目にして初めて自分のいる場所や部屋の様子を認識する。随分と真新しい病院らしい。

▪️拘束を解かれた感じがし、目の前が明るく。

▪️しかしなにをするにも目眩、目眩、目眩。鬼のような目眩が頻発する。

▪️3日、尿道カテーテールを抜く。これが噂に違わぬ激痛。苦悶する僕を尻目に淡々と次のことを説明している看護師。この看護師さん、入院当初から大変良くしてもらっている、さばけた感じで好感が持てる女性なのだが、「なんか色々、伝わらないな」とも思う。病院の日常は僕の日常じゃない。

▪️10月4日金曜日、入院から1週間が経過。もっと長く感じたよ。痛みが常にあること、身動き取れない寝姿、自分を身綺麗に保てないこと、注射や手術への恐怖、一人になれない好きに話せないタバコが吸えない。これらのストレスが危険値を超えなかったのは、上に挙げた看護師さん含め病院スタッフが総じて献身的で柔和であったからだろう。この日の午後医院長から、創外固定を続けている右手の、次回の手術の内容を聞く。なんと全身麻酔による、腰骨からの自家骨移植の可能性もある、3時間を超える手術になるとのこと。

▪️ショックを受ける。また満身創痍に逆戻りするような恐怖。カテーテルも嫌だし。

▪️ドクターの関心事は傷の治療で、僕の関心事は治療の効果と関係がない。まあ、そういうものなんだろうが、毎度ギャップに驚きはある。

▪️10月9日水曜日、手術が行われた。脱臼した手首を戻し位置を保持していた創外固定。これをはずした上、砕けた腕の骨を束ねてプレートで固定する。点滴から全身麻酔が入り、一瞬で気をうしなった。この時の僕はまだ知らない。

▪️目覚めた僕の右手に装着されることになるアイアンメイデンを。ギブスの中はあらゆる苦痛の坩堝だった。

▪️続く。