ゆびゆうびん

只々日々

仕事場で、100人分の軍手を洗って干した。

雨が降っていたから、室内で幾つもの物干しラックを使って干したのだが、100人分、つまり200個もの軍手が、指を下にしてずらっと並ぶ様はなかなかに見慣れない光景である。みな一様に白く、袖口に黄色や青のラインが入った軍手たちの整列は、なんだろうか、奇妙で面白い。

だけど見ていると、ただ奇妙で面白いばかりではない、少し落ち着かない気持ちになる。そうだ、「すごい数の指」が気になるのだ。なにせ200個の軍手、そこに指部分が1000本存在している計算になる。指1000本。なんということだろうか。軍手とはいえ、一度「ここに指が1000本ある」とか考え始めると、もうなんかすごく気持ち悪い。指1000本がある部屋。そんな部屋、食欲とかなくなっちゃう。もうそこでは、人はそうめんしか食べられないだろう。軍手ダイエットが爆誕しかねない。

感覚は人体に平均的に分布しておらず、手や足や舌などに大きく偏っているそうだ。まして手の指となれば特に敏感な部位だろう。軍手の指、とはいえシルエットは人の指と同じなのであって、無数に並んだ時ならば、見た人の指の感覚と連結し知らず何かを感じさせてしまう程の、力を束ねるかもしれない。

例えば「道端に軍手が落ちているのを見る」というあるある体験のこと。あれもよく考えると、軍手だから、落ちていることに気付いてしまうのではないのか。道端に落ちているものなら他にも沢山あるだろうが、軍手は人の手指の感覚と結びつくから印象付けられ、記憶されるのだ。

乾くのを待つ200の軍手の、1000本の指ひとつひとつが、僕の感覚をマイクロこちょこちょしてきた結果、こんな日記を書いている。この日記がインフルエンサーに見つからないことを祈るばかりだ。軍手ダイエットがバズって、無数の軍手の指が釣り下がる世界など考えたくない。