楽園の男

生き急げそして死ねとクラウチングスタートの姿勢のまま6時半のこの時を待っていた目覚ましが壁の弟の結婚式の写真を砕いてみぞおちに食い込んだ。昨日の芋焼酎を吐きながら俺は天高くピースサイン。そのまま飼ってるフレンチブルドックの目を突く。椅子で微笑む内縁の妻は金槌でぶつ。かえすがたなででんぐり返って俊敏カーテン。俺は空のロードを間に合わせない男。新幹線より速く、小便が飛ぶ。 

スタバに並んだ軟弱一休みをガラス越しに睨みとばす俺の視線は獅子にも勝るし、交差点の誘導PTAにけたぐりかまして小学生を交通という名の戦場で死と隣合わせる俺の魂はだから少なくとも小学生には勝る。バス停の妊婦に煙草を吹きかけて自販機のコイン投入口にガムを塗り込んで捕まえた野良猫をトランペット的に持ってケツの匂いを嗅いでいるとパトカーが通り過ぎたけど咄嗟に目の前の畳屋に用もないのに入ったから大丈夫。俺はいつでも逃走路を確保する男。あといつでも急に畳に困ってる顔ができる男。 

10倍ハマりのパチンコ台にコーヒーレディを垂直に突き刺してまんじりパンツを眺めながら唄ったオリジナル鼻歌が桜坂超えの名曲な気がしてきて誰かに伝えたいが俺は友達がいない。腹が減って寄ったコンビニ。研修中のJKバイトの乳首をワイングラス的に指ではじく妄想を他所におにぎりは温まっていく。「お待たせしました」で触れ合う手と手がここを肉欲色欲コンビニエンスに変えたなら。変わらないので夜空の星を繋げてこじるりとトリンドルの星座を作って背徳レズ神話を紡ぎながら自宅へ帰った。 

アパートの前に立っていた内縁の妻が電気メーターゆっくり回転をゆっくり見続けたまま「私の父が危篤なの」でも内縁の妻の父は別に俺の身内じゃないから断じて大丈夫。なぜか寄ってきたカラスが今もし妻の肩に止まったら見ため闇魔道士だなと無駄に戦慄が走ったので全力でフラメンコ風に手を叩いておっぱらってたら隣から苦情がきた。 

ソファに腰掛けて全ゆびに指した10とんがりコーンをひとつひとつ色っぽく食べるリラックスタイムの俺のうなじに不意に雨漏りの雫が落ちてきて悲鳴が出る。俺は七色の声を操る男。いざとなるとオクターブ上の変な声が出せる。外はいつからか
雨らしい。俺は雨漏り落下ポイントに置くバケツを探すも数分後なぜかヤクルトの空き容器を手に一体いつヤクルト飲んだか思い出せないでいるが今はヤクルトの出番じゃない。布団に地図を作るが寝小便を指すならばカーペットに広がっていく雨染
みは最早世界地図の様相だからつまり俺は今世界を踏んでいる男。ベルリンもチョモランマも洗面所より近付いたが朝には水没しかねないけど、俺はノア。方舟の家賃は共益費込で5万。だけど今月は香典代の捻出で払いが滞るかもわからない。