肌と空

肌と空の
境目がないので
右頬をつねると
ポロポロと
ひらがなが落ち
並べれば多分
思い出せるが

左頬をつねると
バラバラと
母親が落ち
血液と雲の
境目もそこだが

背中の草と
木漏れ日が同期し
ウキウキと
今跳ねたのは
バッタか殺意の
どちらかだろうが
既にそれとも
境目を失い

遺言を書く様に
眉間をつねると
太陽は搾られて
そこから落ちた水滴は
ぽとりと
唇に落ち
舌に残る
筆洗いの濁りは
土手で牛を描いた
子供の頃の水彩画を
呼び起こすので

まだ動く眼球を
左右すると
ごろごろと
納戸を開ける音がする
空に電線があれば

肌と空に
境目はなくとも
血液と雲に
境目はなくとも
それは
僕の家へ続く