正月の手前

正月の手前 
そうとんがってもいられず 
階段から滑り落ちてくる 
子供のころの記憶を 
すんでにかわしながら 
それなりに笑う、僕ももう大人だ 
降り始めたのは 
雪ではなくミルメークだ 
庭に転がるのは 
岩ではなくかびたパンだ 
テレビに映るのは 
ニュースではなく教頭先生の話だ 
僕は半ズボンだ 
母はまだ若く 
父は沢山働いて 
僕はエロ本を盗み見る 
それでいて 
死んだらどうしようとか考える 
兄はまだ学生で 
僕はまだ友達がおり 
セックスを知らず 
夕飯に箸を配る役目をこなす 

多くの音楽を知らず 
多くの映画を知らず 
少しも演劇を知らず 
痛みはそれなりに知るが 
どうにも幼く 

僕はきびすを返し 
僕はもう大人なのである 
母の肩を揉もうと誓う 
あと10分したら