風溜まりのモスラ

アパートが地下にもあるような、人の多すぎる街。
風船の溜まる部屋に親友の二人。
風の届ける様々から見えてくるものの物語。

モスラ「ほら、また来たよ。今日は多いな」
タロウ「今度は赤いね」

ふんわりとその部屋に飛んでくる風船。
風船の紐に括ってある石を見るタロウ。 石には顔が書いてあったらしい。

タロウ「笑顔かな」
モスラ「なんにも面白いことはないけれど」
タロウ「そうかな」
モスラ「道理でひどく安い部屋だと思ったんだよ」
タロウ(部屋の風船を眺めて)「見ろよ。こんなにもカラフルだ」
モスラ「終いにはしぼんでしまうのだから、全部」
タロウ「でもこんな風に面白い部屋もないものだろう。君の手に入れた部屋は随分といいよ」
モスラ「君の部屋からは船が見えるのだろう?」
タロウ「船などよりずっといい」
モスラ「地下が良かったんだ。どうしてということもないけれど。なにか多分上よりも煩わしくない気がしてね。とにかくようやく見つけた部屋が、こんな風溜りではなあ」
タロウ「風船溜りだろう」
モスラ「このごろなどはひどいんだ。種や石ばかりではないんだ。遺書や、トカゲや、それから骨や」
タロウ「へえ」
モスラ「なんでも風船に括ってしまえばいいんだろう」
タロウ「奴らの流行が一通りするまで待つしかないよ。とんがった帽子や、銀色のブーツが流行ったら、それらは飽きられるまで、奴らの自慢だったろう」
モスラ「帽子やブーツがこんなに他人に迷惑をかけただろうかね」
タロウ「悪くない部屋だと思うけれどな」
モスラ「今に僕の身の回りは、風船の届けるものばかりになるよ」 

部屋の隅に立て掛けたモスラの父の遺影。
その前の、植木鉢の花を見るモスラ。

タロウ「この花も?」
モスラ「手抜きだろう?父も死んで随分経った」
タロウ「いや、悪くないよ」