電線の雫

雨上がり。
レズの三人組が、一つの部屋に暮らしている。 眠ってしまった一人を残して、コンビニに買い物に行った二人、その帰り道。

店子  「あいつ終わると即寝るね。もうほとんど寝る為にしてるみたいな感じ」
真奈美 「5分後には仏の顔して寝てるよね」
店子  「ああ、なんか3人で並んでヘンな顔して寝てるとこ見てみたいね」
真奈美 「それ無理でしょ」
店子  「無理だね」
真奈美 「うん」
店子  「幽体離脱して?」
真奈美 「どっちかっていうと、その幽体離脱してるとこを見たいよ」
店子  「じゃあ、もう一回幽体離脱して」
真奈美 「わけわかんない」
店子  「高度な技だね。練習しないと」
真奈美 「二重に幽体離脱?それって幽体離脱?」
店子  「幽体幽体離脱?」
真奈美 「うん。いや、わかんないけど」
店子  「幽体から離脱してるんだから幽体離脱でいいんじゃない?そうすると最初のはなに?」
真奈美 「それはだって幽体離脱でしょう」
店子  「駄目だ。難しいね日本語って」
真奈美 「ポテチ開けないでよ。帰ってからだよ」
店子  「歩きポテチ」
真奈美 「聞いたことない」  

突然店子が立ち止まる。  
顔になにか付いたらしい。嫌そうな顔。

真奈美 「なに?」
店子  「なに?」
真奈美 「どうしたの」
店子  「雨?」  

辺りを見回した二人。やはり雨はもう止んでいる。

店子  「水」
真奈美 「え?」
店子  「雨じゃないの?」
真奈美 「え、わかんない」
店子  「なんか飛んできた」  

店子しきりに顔に付いた液体を拭いている。  
頭上を見上げている真奈美。

店子  「なんかむかつく」
真奈美 「止んでるよ。雨は」
店子  「じゃあなによ」
真奈美 「電線」
店子  「え?」  

見上げる二人。電線。

店子  「電線?」
真奈美 「多分」
店子  「電線からしずくが落ちてきて?」
真奈美 「うん」
店子  「ああ」  

妙に納得した店子。ポテチを食べる。

真奈美 「面白いね」
店子  「そうでもない」  

店子歩き始める。しかし立ち止まったままの真奈美。

店子  「なにしてんの」
真奈美 「いや、落ちてこないかなって思って」
店子  「は?」  

しばらくそこに立っている真奈美。目を閉じている。  
なんとなくそのとなりに立って目を閉じてみる店子。

店子  「行こうよ」 真奈美 「うん」