漫画家の萩原一至さんが喋っているところを初めて見た。
山田玲司さんのyoutubeチャンネルでである。大変柔和で知的なお方なようで、もう少し気難しい人を勝手に想像していたから、なんだか嬉しかったな。ジャンプ黄金期と10代後半が重なる僕である。多感な時期にあの頃のジャンプ連載陣から沢山影響を貰ったわけだけど、中でも「BASTARD!!」には一層、思い入れが深い。
当時、大友克洋さんがひいた「大友以前以後」というラインはあまりにも極太すぎて、全漫画家がその影響下に置かれてしまう程だった。みんなそのラインを踏まえて、画力を磨いて、新しい何かを探して、戦っていた頃だったと思う。
そんな中スクリーントーンを重ねて複雑なグレーゾーンを表現する手法が流行りだすと、大友さんとはまた違ったリアル路線、ウェットかつ透明感のある表現方法がどんどん開発されていった。これを駆使する人たちの中でも萩原さんは突出していて、ばかりかキャラクターもデッサンもコマ割りも構図も擬音も、漫画を構成する全ての要素がハイクオリティ、ハイテンションで、いつも、圧倒的だった。
そのかわり遅筆で、時折下書き同然のページが掲載されたりしてたけど、でも別に、それでも良かったんだよ、そこも含めて週刊連載のライブ感だった。鳥山が冨樫が井上が「漫画家がついさっき描いた線」を受け取ってるという感じ、面白いものを必死で作ってくれている、その熱気を感じていたのだ。
僕は、「BASTARD!!」が季刊に移行してから天使降臨まで(9巻から13巻あたりかな)の絵作りは、漫画の究極かも知れないと未だに思っている。アンスラ復活前後とか凄すぎて意味わかんないどうなってんだってなる。
そこで異常な瞬間最大風速を記録して、その後はちょっとアレなんだけど、まあ仕方ないっていうか、そんなもんであろう。お元気な姿を拝見できてとっても嬉しい。
一方でちょっと、ネガティブなことも思うところがあって、書き残しておきたい。別に萩原さんに対してではない。
江口寿史さんの問題を鑑みても、この世代の人たちが大声で発信するってことの危うさっていうか、心配についてである。例えば大友さんの存在って、僕の中ではダウンダウンに等しいんだけど、ダウンダウンは現在においては無邪気に評価することが難しい、権威になってしまった人だったりする。
岡田斗司夫をはじめとする「中年オタク向けうんちくコンテンツ」で垂涎の知識やエピソードを披露されれば、僕らはどうにも興味深いし、集ってしまう。だけどその輪って怖い。中年なんて数が多いし、ただ群れて昔を懐かしむだけで、基本邪魔なのだ。その輪の中心にいる人は権威的に見えてしまうし、下の世代にうっかり説教臭いことなんて述べてしまえば、輪の外からどう見えるか、大好きな人が世間からキャンセルされる様は、見たくないよ。
僕らはコンテンツの延命に慣れすぎてしまっている。それはあんまり良いことじゃないと思う。ということを自覚していたい。