「Take Numbers」 

公演

  ・ 企画内容

晴れ舞台に向かわない稽古場に作品が美しい時、僕は本番が楽しみなのか怪しい。 

試行錯誤する稽古場が、答えをまさぐる声や身体が、そのまま提出されていくような、「ゆるやかな本番」は存在しえないだろうか。 

各所で公開稽古を繰り返し、これを撮影した後編集した映像を、作品とするのはどうか。訪れた人々は観客として、出演者として、風景として、フレキシブルに作り手と結びついていく。「晴れ舞台」という一点に向かわない演技体は、曖昧で散漫な状況を受け入れなければならない。曖昧で散漫な状況、それは「社会」という言葉に置き換えられるのかも知れない。 

灰ホトラは、ショート作品を作っていく。初期稽古場で作品について検証、一定のフォーマット作りを終えたあとは、様々な場所で「テイクナンバー」の付いた公開稽古を行っていく。この様子は撮影される。 

各テイクは蓄積する稽古場であり、並列する本番でもある。映像素材は編集され、一本の動画作品として最終出力される。  

作品番号031「ひねくれもす」 

出演 ・ 新井和枝/藤原祥子 
脚本、演出、音楽 ・ 荒木聡志 

「Map公演」 ・ 協力・map /特別協力・株式会社ヤマト 

Take01 
日時 ・ 2019年2月21日(木)  
19時00分  
場所 ・ 「Meabashi Works」(群馬県前橋市千代田町2-7-17) 


Take02 
日時 ・ 2019年2月28日(木)  
19時00分  
場所 ・ 「Meabashi Works」(群馬県前橋市千代田町2-7-17) 


Take03 
日時 ・ 2019年3月1日(金)  
19時00分  
場所 ・ 「map」(群馬県前橋市千代田町2-12-7) 


Take04 
日時 ・ 2019年3月9日(土) 
場所 ・ 未定(屋外を予定) 


Take05 
日時 ・ 2019年3月11日(月)  
19時00分  
場所 ・ 「map」(群馬県前橋市千代田町2-12-7) 

作品番号031「ひねくれもす」テキスト全文 


砂場にあの子一人でずっと 座って砂 いじってる背中 
私はブランコ前に後ろに 前 後ろ 前 後ろ 

ひとり ブランコ ひとり 砂場 ふたりだけ の 公園 

砂場にあの子一人でずっと 座って砂 いじってる背中 
私はブランコ前に後ろに 前 後ろ 前 後ろ 前 後ろ 

耳 耳 ラジオ 交通情報 7号線 玉突き 渋滞だって 
耳 耳 ラジオ 一番人気 一時間 ラーメン屋 並ぶんだって 
だけども どうでもいいな だけども 長いな あの子 砂遊び 

わたし ブランコ あの子 砂場 ふたりだけ の 公園 

砂場にあの子一人でずっと きっと立派なお城とか かな 
背中 少し 踊ってる あの子も 一人ぼっちを ダンス だな 
  
夕暮れ迫れ 夕暮れ迫れ 前 後ろ 昼間も 夜も  
夕暮れのため 夕暮れのため 前 後ろ 昼間と 夜の  
はざまを真ん中 昼間も 夜も 夕暮れのため 
夕暮れ待ってるわたしはブランコ 前 後ろ 前 後ろ 
あと少し あと少し 

伸びてけ 影の背丈 霞んでけ 街の景色 まだ灯るな  
赤めけ 西 黒めけ 東 道ゆく人の カラフル減れ 
カラス飛べ 夕暮れっぽいから あと寺の鐘鳴れ 新世界より流れろ 夕暮れっぽいから 
おばけ出ろ 夜より 夕暮れ 虚実 重なる はざまにこそ  
前 後ろ おばけ は 相応しい 

ほら なんか フェンスの向こう 
電柱がおろちで 標識がマンドラゴラで 
ブロック塀のぬりかべの先 雑居ビルがゴーレムで  
人魂押し寿司ぶら下げた サラリーマンがゴブリンで 
狛犬連れてる烏天狗のOLが スライムベスを飲んでいる 
さっきから 前 と 後ろ その中間の はざまに異世界 
耳 耳 ラジオ 勇者の情報 もうちょいで 伝説の剣 抜けそうだって 

だけども そうでもないな だけども いつもの公園 
砂場にあの子一人でずっと 座って砂 いじってる背中 
私はブランコ前に後ろに 前 後ろ 明日 昨日 明日 昨日  
その中間の 今日1日を 忘れるために 
やなこと全部 前 後ろ 前 後ろ わたし 狂ってけ 

このブランコに 目を閉じて 脳転ばせて へそ酔っ払わせて 前 後ろ 
とろけろ家族 とろけろ友達 とろけろ雑事 前 後ろ   

と 目を開けると 前 後ろ はて 前 後ろ 
砂場にあの子一人でずっと いたあの子 が いない 
砂場に盛った土残ってる ひとつ 山で ふたつ こぶの  
私はブランコ真ん中で止めて ふたつ こぶで ひとつの 山の 
前に立って 山じゃない これきっと 山じゃない 

夕暮れ来たれり これきっと あの子の 心臓 かな 
おばけの あの子の 心臓 かな 
ひとつ 山で ふたつ こぶの この砂の 心臓は  
もしかしたら わたしたちの 心臓 
夕暮れ嬉しい はざま嬉しい 私たちは 明日も砂の心臓で 一人ぼっちを ダンス かな 
ここは夕暮れ ここは夕暮れ わたしたちの本当を 生きるところ 
世界を まぼろしにして 心臓を 砂にして  
明日も この夕暮れの公園で 一緒に 狂うよ 

わたしはカバンを 前 後ろ 前 後ろ 何もない家へ