右手の小指とガスコンロが、
繋がってしまったよ。
コンロに乗った味噌汁の気持ちが、
分かるんだ。
そのまんま、テレビの野球中継を、
見ていたら、
ピッチャーもバッターも、
味噌汁の具と同じになって、
しまったよ。
きりきり、
きりきりと、
味噌汁の最も快楽する、
温度を探るコンロと小指の感覚が、
痛い位に研ぎ澄まされていくと、
棚にしまった12の調味料の、
香りを嗅ぎ分けられる程に僕は、
剥き身になってしまったよ。
遠くの山の稜線と、
味噌汁の温度グラフが交わった瞬間、
弾き飛ばされるように分離した、
僕の小指とガスコンロ。
僕の頬に漂う微妙の悦と、
奇跡の旨みを残して。