ほそまきながら

只々日々

巻き爪である。

僕の右足の、親指の爪の、左側。かの場所にやどりし巻き爪。いつからか巻いており、既に長年の付き合いとなっている。のびてくると歩く時、当然痛い。無理矢理削ったりして対症療法を繰り返しながら現在に至る。

どのくらい巻いているかと言うと説明に困るのだが、お蝶婦人の髪の毛よりは巻いていると思う。負けてないと思う婦人に。とにかく見事にくるっと巻いている。

実際、もう巻いてる部分が筒状に固まってしまっており、言うなれば、爪の左側に小さな細巻きがセットされていると言っても過言ではない様相を呈している。

自らに装着されている右足の爪の片側の細巻き(巻き爪のこと)をしげしげと眺めながら僕は考える。もし両手両足、全ての爪の両側が巻き爪となって細巻き化したあかつきには、比類なき細巻き人間として、図鑑に掲載されるかもしれない。だが見落としていることはないか。そうだ、僕はかんぴょうが苦手なのである。かんぴょうが苦手な人間が細巻き人間を名乗る資格があるだろうか。こんな僕では図鑑に顔向けできない。

細巻きにかんぴょうが入ってる時、思う。この細巻きを砲身にして、かんぴょうがミサイルみたいにどこか遠くへ発射されてしまえばいいのに、と。発射されたかんぴょうは空中を旅し、遠く外国の地でかんぴょう好きな人と、結ばれるかも知れない。あるいは上向きに発射されやがて地球の引力を脱し、かんぴょう好きな宇宙人と、結ばれるかも知れない。とにかくかんぴょうには、僕とは結ばれないということをどうかわかってほしい。

そろそろ歩く時、右足が痛む。この痛みもかんぴょうのようにどこかへ飛んでいってほしいものだが、そもそもかんぴょうは細巻きから発射されたりしません。