ピノりをささげる

只々日々

ピノ、あなたが好きです。

1976年、森永乳業が発売したアイス、ピノ。現在に至るまで広く国民に愛されているあなた。僕もあなたの虜です。まず、味が好きです。チョコとバニラのハーモニー。甘くておいしい。でももちろん、それだけじゃない。僕の中でどんなにパルムやチョコバッキーやセルフチョコレートクラッシュチョコミントのおいしさがピノに肉薄しようとも、決して届かない魅力が、あなたにはあるのです。

ピノを食べる時の、「箱の中に6個入っててそれをいちいちいっこずつピックでつっついて食う」という行為全体の嬉しさって、とてもいいです。いや、ピノが6個で充分だと思ったことは断じてありません。いつだってもっと食べたい。そこを勘弁してあげているんだ、そういう思いでいます。6個食べ終えて静かに置いたピックをみれば、無意識にかじった跡がある。それは、もっと食べたいところを我慢しそして、乗り越えた形跡です。自分の寛容さをセルフ讃える時間、それもピノを食べるという時間に含まれています。

スーパーなどに行くと、ピノのパーティーパックを目にすることがあります。幾つかの味のアソートが、何十個か入っているやつ。やめてください。もしそれに手を出したら、もう二度と元の自分には戻れなくなる。ピノを7個以上続けて食べたことがないんです。そんなに続けて食べるのはなにか罪深い気がします。そんなことして、逮捕されませんか。本部にいるモノリスみたいに巨大で黒光りしたピノから指令を受けた、幾つかのピノがキングスライム的に合体した強くて大きめなピノ警官に、逮捕されませんか。逮捕はいやです。

「ピノ一度に食べ過ぎ罪」の僕を袋小路に追い詰めサーチライトを浴びせるピノ警官たち。その危機的場面に颯爽と立ち塞がる3つの背中。パルム、チョコバッキー、そしてセルフチョコレートクラッシュチョコミント。僕を助けに来てくれたのです。ああ、僕はなんて愚かだったんだ。こんな素敵なアイスたちの魅力に気づけなかったなんて。僕は3人と握手を交わします。でもまあ、結局みんなピノに倒されるだろう。ピノが一番おいしいもんなあ。