脳ビブラフォン

わたしの所為で縮んでく 
男の白いセーターを 
むしって食ってそのかわり 
炊いといた 
米粒いつもより 
つやつや真っ白 

銀歯のノイズが 
男の「ただいま」のただいとまの間 
慌てて叩く「おかえり」は 
わたしのあばらを鉄琴に 
この夜も 
ジェンガを抜くように 
食卓の椅子を引くと 
月もそうで 
窓の横の 
掛けた背広を横切った 
米の湯気がひどく 
ゆっくり 

出会った時から傷めてる 
男の手首の昨日より 
細いような長いようなの気の所為が 
わけもなく 
嬉しい 
鮭が箸を滑った 
男の銀歯は今 
米を砕いているが 
それはお前のセーターです 
いつかお前の脳が 
痴呆で縮んだら 
むしって喰ってそのかわり 
もっとつやつや真っ白な 
米を 
炊いてやる 

今日部下を叱ったんだと 
男は 
漬物の蓋を開ける 
ついでに 
わたしの嘘が開くとしても 
神棚のへそくりは 
母が守ってくれるだろう