老人と月

老人が転ぶみたいに、
コンビニでガムを買う。
お釣りの一円玉にちょこっと、
ついてる緑色は多分、ペンキ。
だって、
擦っても落ちない。

帰ってみかんを食べて、
みかんの皮の裏を眺めていると、
雨が降ってきた。
ニュースでやってた逃げたゴリラは大丈夫だろうか。
半年前のお土産のお茶が不味く、
不味ティーと名付けることにする。
ポケットに砂が少し、
仕事を少し、
別れた彼女のことを少し、
上司のまっすぐすぎる襟足のことを少し、
炊飯ジャーの丸みっていいなと少し、
休日の大体。

でも一円玉の緑は、
モンゴル平原の色と同じだから大丈夫。
回した椅子が軋んで、
猫と蝉の鳴くような音。
膝の裏で手を温めて、
ピンポン球大のありがとうを作って、
鼻をかむ。
月が膨らんだような気がする。

眠いしもう寝る。