東京都調布市に「せんがわ劇場」はある。
この劇場は毎年「せんがわ劇場演劇コンクール」を開催しており、今年で11回目にあたる。僕はこのコンクールに応募していた。
応募フォームに、これまでの活動履歴や作品、動画の紹介、そしてコンクールで上演したい作品のコンセプトなどを投稿し、結果を待った。果たして灰ホトラは書類審査を通過し、7月頭に行われる公開上演審査に臨むことになったのだった。
SNSなどに既に投稿したことと重複するが、今日までの灰ホトラの活動を可能にしたのは、僕以外の人たちの力によるものだ。僕は一人で何かをしたことはない。周囲の人々に感謝を。おかげさまで得た機会である。
そうしてしかし、今後のスケジュールはタイトだと言える。
上演予定の作品は「列と野鳥」だ。2018年にアーツ前橋の企画「公演デビュー」の中で上演したことのある作品で、その時は20分程の小作品として提出した。コンクールではこれを40分版に再編集することになる。
どんな作品か。日本国憲法を役者の台詞として扱う作品だ。スマホ画面に表示された憲法を読み上げていく役者たちが、次第に寸劇を形作っていく。政治性丸出しのコンセプトの周辺を、空虚で軽率な態度で泳ぐような、ある意味てんでだめな世界を描き出す。
一つのテキストを複数人で扱うことは灰ホトラの主力手法としてあって、憲法を台詞化する発想は僕には自然なものだった。左右の思想のそれぞれにいちいちナイーブで、場当たり的に生きることに誠実の一切を込めることでしか自己肯定できない人の愚かさや痛みを描くことも、繰り返してきたことだ。「列と野鳥」はそうして、灰ホトラの表現の一つの到達点だった。
アーツでの上演にさして満足してはいないが、非常に正直で嘘なく行為した上演だったなと振り返る。しかしコンクールに向けては、もう少し腕力や説得力に底上げが必要だろう。
灰ホトラは基本ユニットなので、当時のメンバーはそれぞれ別の場所で活動している。例によってまた、「良い出会いを探す」ことが必要だ。今回は今までで一番、そのことが大切だろう。