僕の友達の庭よりも、僕んちの庭は広く、
それは僕の密かな自慢だった。
僕んちの庭は広く、
色色の植木や盆栽や岩やらあって、
僕は僕んちの庭が自慢だ。
僕は僕んちの庭が自慢だ。
僕は自慢の庭で遊ぶ。
むしろ一人でも遊ぶ。
僕んちの庭の西、
まだら模様の岩の裏、ちいさな松の木の下に、
ずっと前からある古くて変なヘルメットのことを多分、
父も母も姉も知らない。
僕の自慢の庭にある、
僕の秘密のヘルメット。
或夏の日に、
僕は僕より小さな庭の友達と、
サイクリングに出かけていった。
雹はおもむろに降り始め、
僕等は公園のトイレに逃げ込んだ。
嫌な匂いのするトイレの中で、
僕は僕の自慢の庭にある、
僕の秘密のヘルメットを思った。
僕のヘルメットは、おもむろに降り出した雹に、
打たれて音を鳴らしているのだろう。
ずっとじっとかたくそこにある、
ヘルメットは鳴っている。
嫌な匂いのするトイレの中に、
僕の庭より小さな庭の友達と二人、
僕は僕の自慢の庭の、
僕の秘密のヘルメットを、
誇らしく思った。