大会で負けた少女

金網越しに、
大会で負けた少女を愛した。
遠く点呼の声。
無粋にも低く飛ぶ鳥。

置き引きに遭ったかのように、
仲間に振り向く。
大差の敗北。
冷えたポテトをぼんやり咥えながら、
僕は大会で負けた少女を愛した。

不動の審判。
敵手の嬉々。
顧問の手から、ポカリが滑る。
汗と涙で、
透けるブラ。

運命を運転する不覚のシードを恨んで、
青春を刺青するギンガムのタオルを握り締め、
今夜怒涛、悲しみのノンアルコールを、
明日は蒸せる恋愛と茫漠の受験に変える。
多分。

金網越しに僕は、
大会で負けた少女を愛した。
必要以上に舞え砂吹雪。
よれる眼鏡を直すな後輩。
二度と戻らぬ季節を匂って、
新陳代謝に抗わず、
まっすぐに育て少女。

金網越しに僕が勝手に愛した、
典型の時間よ。
誰もその嘘を暴くな。